Slim-IIを用いた計測結果例

Fig.8 気流に残留する速度変動計測例 2)

Fig.8は、吹出し式低乱風洞測定部断面(600mm×300mm)中央部に下流から上流に向けてSlim-II型風速計を設置し、気流速度が20m/s時において気流に残留している速度変動のパワースペクトル解析した結果(黒線)を示しています。周波数1kHzより低い帯域は残留変動ですが、それより高い帯域の30kHzを中心とした山状のスペクトル分布は、CTA固有の電気雑音です。矩形波テストから定温度ブリッジの共振周波数(図ではピーク周波数)、熱線の時定数、さらに定温度ブリッジの減衰係数ζ(=0.75)が得られるので、定温度ブリッジのサーボアンプ雑音特性(公表されたカタログ値)からこの動作条件におけるCTAの電気雑音を緑の実線で示すように推定することができます。この推定雑音を黒線のスペクトルから差っ引くことで、CTA雑音を差し引いた気流変動スペクトラム(赤線)を求めることができます。このような処理で、熱線風速計のダイナミックレジは1kHzから3-4kHz広がったことになります。以上の結果から、仕様の項に記したように、電気雑音は流速換算で0.0025%(0.1-1kHz帯域)で、周波数帯域を1Hz-250kHzまで広げても 0.07%に過ぎません。 もう1つ重要な指摘は、電源ハムや高周波帯域の誘導雑音は皆無であることが分かります。


■Slim-IIの雑音特性を他社の風速計と比較した例

 

Fig.9 Slim型とStreamline Pro風速計の電気雑音比較2)

Fig.9に市販CTAとの比較結果を示します。比較に用いた風速計はDantec Stramline Proです。熱線センサの動作抵抗は室温抵抗値の約1.8倍、当社のそれは約1.6です。流れの速度は、U = 8 m/sで、上記の風洞を用いています。橙色線はStramline Pro、黒線は当社のSlim-IIを用いた結果です。100-300Hz帯域における速度返答両者は良く一致していますが、定温度ブリッジの共振周波数はSlim-IIがやや上回っています。300Hz以上の帯域におけるCTA固有の電気雑音はStramline Proがやや低いことを示しています。しかしながら、矩形波テストから推定したCTAの固有の電気雑音を差し引いた連続的な雑音レベルは、ほぼ同程度とみなせるでしょう。ただ、Stramline Proにはライン性の電源ハムや高周波帯域の誘導雑音が多数観察されていることが分かります。
なお、Fig.8とFig.9は文献2)より引用しました。


■参考文献

1) 髙木,稲澤,淺井,日本流力学会年会2019、定温度型熱線風速計の広帯域周波数応答特性を求める簡易手法.
2) Inasawa, A., Takagi, S. and Asai, M., Improvement of signal-to-noise ratio of the constant- temperature hot-wire anemometer using transfer function, accepted by Science Measurement and Technology, in press.

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